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登録ヘルパーとして介護の仕事をしていると、移動時間が多く発生するかもしれません。この移動時間の取り扱いがどうなっているのかは、仕事をする上で重大なポイントです。
特に「移動時間は賃金が発生するのか」そして「移動時間に起きてしまった事故は労災になるのか」は、働く際の安心感に直結します。
ここでは、介護ヘルパーの仕事で発生する移動時間の取り扱いについて、厚生労働省の見解を元にまとめました。安心して働くためにも、ぜひ参考にしてください。
介護ヘルパーの仕事では、利用者宅から利用者宅までなど、移動する時間が発生します。この移動時間は、労働時間です。
厚生労働省は、「介護労働者の労働条件の確保・改善のポイント」の中で、移動時間は労働時間として賃金の支払いをするよう、事業者等に呼びかけています。
(参照:厚生労働省「介護労働者の労働条件の確保・改善のポイント」)
利用者宅へ移動するのは、業務上必要なことです。利用者の介助がメイン業務ではありますが、その業務を遂行するために必要な準備時間ですから、当然賃金が発生します。
原則として、登録ヘルパーでもこの扱いは同じです。「正社員ではないから移動時間は賃金が発生しない」などということはありません。
介護ヘルパーの移動時間には、「自宅から事業所まで」「事業所から利用者宅まで」「自宅から利用者宅まで」といったケースが考えられます。
移動時間は労働時間とお伝えしましたが、このように様々な移動のパターンにおいて、そのすべてが労働時間にみなされるわけではありません。
これらのうち事業所が介護ヘルパーに移動を指示し、介護ヘルパー自身で好きなように行動できない拘束されている時間が労働時間です。
自宅から事業所までの移動や自宅から利用者宅までの移動は、単に通勤時間なので、労働時間ではありません。ほとんどの他の仕事と同じです。しかし、「事業所から利用者宅まで」や「利用者宅から利用者宅まで」は、すでに出勤した後に発生している移動時間であり通勤時間ではありません。ヘルパー自身が好きに過ごせる時間でもありませんから、労働時間となります。
移動時間のすべてが労働時間にはならないとお伝えしましたが、ではどのようなときが労働時間と認められないのでしょうか。
まずは、自宅から利用者宅に移動し、そのまま自宅へ戻るケース。これは直行直帰で移動時間が単に通勤時間なので労働時間ではありません。
では、たとえば利用者Aさん宅での業務が終了し、次のBさん宅まで移動が発生するケースで、Aさん宅からBさん宅までの移動時間は30分ですが、空き時間が2時間ほどあるケースはどうでしょうか。
このケースでは、移動時間の30分は労働時間ですが、残りの1時間30分は自由時間なので労働時間とは認められません。
これがもし自由時間ではなく、「待機」など時間の使い方が拘束されている場合は、労働時間に含まれる可能性が高いです。しかし、私用で買い物に行ったり、自宅に帰ったり、カフェでコーヒーを飲んだりなど自由に過ごせる場合は労働にはならないでしょう。
車や自転車で移動する機会もあるかもしれません。移動が多いほど、事故に遭うリスクも高まります。
業務の移動中に交通事故に遭った場合は、労災が適用される可能性が高いです。
登録ヘルパーの契約形態によっては労災適用外になることも考えられますが、実態が雇用関係であれば、労災と認められます。
ただし、労働時間中の事故が対象です。労災の観点からも、どの移動時間が労働時間なのかは、介護ヘルパーの仕事をするにあたっての重要事項といえるでしょう。
労災を申請すると事業所とトラブルになるようなこともあるので、就業前に労災条件などをきちんと確認しておくと安心です。
移動時間は、労働時間と認められれば賃金が発生します。しかし、移動時間の賃金は、通常業務とは別に定めることが可能です。
仮に時給で契約していたとして、介助業務中の時給と移動時間の時給が異なる可能性があります。「移動時間も介助業務と同じ賃金だと思っていたら、実際に受け取る給与額が少なかった!」ということになりかねませんので、注意してください。
また、移動時間の賃金は、国が定めた一律の金額もありません。
ただし、移動時間の賃金は、最低賃金を下回らない範囲での支給です。
(参照:厚生労働省「訪問介護労働者の法定労働条件の確保のために」)
労働者と事業者の話し合いで決めることもできるので、交渉の余地もあります。契約時に移動時間の賃金についてもしっかり確認しておきましょう。
もし移動時間の賃金が支払われていないことに気づいたら、どうすればいいのでしょうか。
一番はじめにするべきことは、事業所への相談です。
事業所の中には、移動時間の正しい取り扱いの知識がなく、移動時間分を上乗せして賃金に含めていたということもあります。また、移動時間に賃金が発生することを知らない事業所もないとは言い切れません。
事業所に相談して解決すればそれがベストです。行政機関に相談に行っても、まずは事業所に聞いてみるよう言われるでしょう。
第三者にいきなり相談すると、事業所とのトラブルに発展しかねません。事業所の考えを確認した上で、改善が期待できない場合は、行政機関や弁護士などに相談してください。そして、登録事業所の変更も検討するべきでしょう。
ヘルパー業務において、業務上必要な移動時間は労働時間とみなされ、賃金が発生します。ただし、単に通勤時間の場合や休憩・自由時間の場合は、労働時間にはならず、賃金も発生しません。
労働時間とみなされる移動時間に発生した事故は、労災認定される可能性も高いことなど、介護ヘルパーの仕事をするにあたっては、移動時間の取り扱いが大きなポイントとなります。
移動時間の賃金は、介助業務とは異なる取り決めをしてもかまいません。通常業務より低い賃金になっている可能性もあるので、業務がスタートしてからのトラブルを避けるためにも、契約の際に移動時間の賃金条件をきちんと確認しておくことが大切です。